不動産売買の媒介契約とは?種類やリスクを解説
不動産売買の媒介契約は主に3種類です。一般媒介契約は複数の不動産会社に依頼でき、依頼者自身が買い手を見つけることも可能です。専任媒介契約は1社のみに依頼しますが、依頼者自身が買い手を探せます。専属専任媒介契約は1社のみに依頼し、依頼者が直接買い手を見つけても取引は不動産会社を通す必要があります。
ただし、それぞれの契約はデメリットもあるため、契約を選ぶ際には物件の特性や売却のスピード、依頼者のニーズを考慮することが大切です。
目次
不動産売買で交わす媒介契約の種類
不動産の売買を進める際、多くの方は不動産会社へ依頼します。このとき、不動産会社と「媒介契約」を交わす必要があります。しかし、媒介契約には3種類があり、それぞれに異なる特徴や制約が存在します。ここでは、不動産売買において重要な役割を果たす媒介契約の種類について解説します。
◇一般媒介契約
一般媒介契約は、専属専任媒介契約や専任媒介契約とは異なり、依頼者が複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約です。この契約の大きな特徴は、依頼者自身が直接買い手を見つけて取引を成立させることも可能であり、自由度が高いことです。
また、指定流通機構(レインズ)への物件登録や販売状況の報告は義務ではなく、任意で行えます。そのため、依頼者は比較的自由に売却活動を進められます。
一般媒介契約の有効期間は、国土交通省の定める標準媒介契約約款に基づいて、通常3カ月以内とされており、契約者はその期間内で自由に活動を行えます。この契約には「明示型」と「非明示型」の2種類があり、依頼者はどちらかを選択できます。
明示型では、他の不動産会社に対してもどの会社に仲介を依頼しているのかを知らせる必要がありますが、非明示型ではその必要がありません。いずれの場合も、売却が成立した際には、契約が成立した不動産会社に速やかに通知することが求められます。
◇専任媒介契約
専任媒介契約は、不動産売買において、依頼者が1社の不動産会社にのみ仲介を依頼できる契約形態です。この契約では、他の不動産会社に重複して仲介を依頼できませんが、依頼者自身が購入希望者を見つけた場合には、その相手と直接売買契約を結ぶことが可能です。
これにより、依頼者は自らの努力で取引相手を見つけられる一方、依頼を受けた不動産会社は、他社に取引を奪われる心配がないため、積極的に販売活動を行うことが期待されます。
専任媒介契約の有効期限は3カ月と定められており、この期間中に契約が成立しなかった場合には契約を更新するか、他の契約形態を検討する必要があります。また、契約締結後7日以内に指定流通機構(レインズ)への物件登録が義務付けられており、登録済み証を依頼者に渡さなければなりません。
さらに、不動産会社には2週間に1回以上の頻度で、販売状況や業務処理の進捗を依頼者に報告する義務があり、依頼者は定期的に進捗状況を確認できます。
◇専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、不動産売買において依頼者が1つの不動産会社としか契約できない、最も厳格な媒介契約の一種です。
この契約では、他の不動産会社との契約は一切認められず、依頼者が自分で買い手を見つけた場合でも、不動産会社の関与が必要とされます。依頼者が自ら買い手を見つけて売買契約を締結した場合、不動産会社は報酬を請求する権利を持っています。
この契約では、契約を結んだ不動産会社は、依頼者に対して1週間に1度以上の頻度で販売状況を報告する義務があります。報告は書面または電子メールで行う必要があり、口頭や電話では認められません。
さらに、専属専任媒介契約では、指定流通機構(レインズ)への物件登録が義務付けられており、不動産会社は契約締結後すぐにレインズに登録し、5営業日以内にその証明書を依頼者に交付する必要があります。
専属専任媒介契約の有効期間は3カ月以内とされており、契約期間が過ぎた場合は自動更新ができず、再契約の際には新たに契約書を作成して取り交わす必要があります。この期間中に契約を解除することも可能ですが、解除する場合は書面や電話で不動産会社に通知しなければなりません。また、契約解除に伴う営業経費の支払い義務が発生する場合もあります。
それぞれの媒介契約にリスクはある?
不動産売買における媒介契約は、契約内容によってはさまざまなリスクが伴います。依頼者が契約の種類や条件を十分に理解していないと、後にトラブルや予期せぬ負担が生じる可能性があります。ここでは、媒介契約に関連するリスクについて見ていきます。
◇一般媒介契約
複数の不動産会社と媒介契約を結ぶと、それぞれの会社と個別に連絡を取る必要が生じます。たとえば、物件の販売状況を把握したいとき、内覧の調整が必要なとき、あるいは売却価格を変更したいときなど、各不動産会社に個別で連絡を取り合わなければなりません。
さらに、不動産会社には販売活動の報告義務がないため、物件の進捗状況や反響を把握するためには、依頼者が積極的に確認する必要があります。契約する不動産会社の数が増えるほど、情報の共有や連絡が複雑化し、これらの連絡や調整にかかる労力や負担が増大するでしょう。
◇専任媒介契約・専属専任媒介契約
不動産取引は、その成否が営業担当者の力量に大きく左右される部分があります。例えば、物件の価格設定や広告戦略、交渉力など、売却活動の各段階での判断や対応が遅れたり、効果的でなかったりすることが考えられます。
運悪く経験やスキルに乏しい担当者に当たってしまうと、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んでいたとしても、物件の売却が思うように進まず、売却が長期化するリスクが生じます。
特に専任媒介契約の場合は、1社の不動産会社にしか依頼できないうえに、依頼者自身で買主を探すこともできません。そのため、担当者の能力が不足すると物件がなかなか売れない状況が続き、ストレスや不安が高まる可能性があります。
不動産売買で媒介契約を選ぶ際のポイント
不動産売却においては、どの不動産会社とどの媒介契約を結ぶかに大きく依存しています。媒介契約の種類や選択の基準を理解しておくことで、よりスムーズで納得のいく取引が可能になります。ここでは、不動産売買で媒介契約を選ぶ際に押さえておきたい重要なポイントをご紹介します。
◇物件の特徴に合わせて選ぶ
物件が都心部や人気エリアにある場合は一般媒介契約を、それ以外の地域や相場価格より高く売り出したい場合は専任(または専属専任)媒介契約を選ぶのが良いでしょう。
都心部や人気エリアの物件は、購入希望者が多数集まりやすいため、一般媒介契約で複数の不動産会社に仲介を依頼し、それぞれの会社が競争することで、より有利な条件で売却できる可能性が高まります。
また、複数の不動産会社が積極的に販売活動を行うことで、物件の魅力が多くの購入希望者に伝わりやすくなります。
一方、都心部以外の地域にある場合や、相場よりも高く売却したい場合は、専任または専属専任媒介契約を選ぶことが効果的です。こうした地域では、購入希望者がすぐに見つかることは難しい場合も多く、不動産会社の地域情報や売却活動が重視されます。
◇不動産会社の得意分野を確認する
会社によっては、一戸建てを中心に取り扱っている場合や、マンションの売却に強みを持つところもあります。自分が売却したい物件が、その不動産会社の得意分野に含まれているかどうかを見極めることが重要です。
さらに、大手不動産会社は広範なネットワークを持ち、より多くの購入希望者にアプローチできる点が強みです。一方で、小規模な地元密着型の不動産会社は、地域の特性や市場に精通しており、きめ細やかなサービスを提供できます。
得意分野を把握するには、年間の取引実績や平均的な売却期間についても詳しく聞く方法があります。
早く売りたいなら動産買取も検討
仲介による売却方法では、時間がかかることがあります。特に転勤や引っ越し、相続などの理由で早急に現金化したい場合、仲介で売れるのを待っていられないかもしれません。迅速な売却を希望するなら不動産買取も検討しましょう。
◇不動産買取とは
不動産の「買取」とは、不動産会社へ直接不動産を売却する方法です。通常、不動産売却は「仲介」によって買主を探しますが、物件の場所や状況によっては「買取」が適していることがあります。
例えば、急いで現金化したい場合や売却までの待ち時間が取れない場合、または周囲に知られずに素早く売却したい場合に「買取」が選ばれます。また、築年数が古く耐震性が低い物件や、内部が損傷している物件、人気のないエリアにある物件なども、仲介では売却が難しい物件であっても買取であれば売却できる可能性が高まります。
◇不動産買取の種類
不動産の「買取」には、主に「即時買取」と「買取保証」の2つの方法があります。それぞれの特徴を理解し、状況に最適な方法を選ぶことが大切です。
即時買取
不動産会社にすぐに買い取ってもらう方法です。この方法では、不動産会社と契約を結んだ後、通常1ヶ月程度で売却手続きが完了します。短期間で確実に現金化したい方に適しており、例えば、急な転勤や引っ越しなどで早急に売却が必要な場合に非常に有効です。
買取保証
まず市場に物件を出し、一定期間内に買主を探す「仲介」を行います。その期間内に売れなかった場合に、不動産会社が最終的に買い取るという方法です。買取価格は市場価格よりも低くなることが多いですが、売却できる可能性を最大限に追求しつつ、万が一の場合に備えられます。
この方法は、多少の時間をかけてもできるだけ高値で売りたいが、期限内に必ず売却を完了させたいという方におすすめです。
不動産売買で媒介契約を交わす際には、主に3つの契約種類があります。それぞれの契約には異なる特徴や制約があり、物件の特性や売却のスピード、依頼者のニーズに応じて適切な契約を選ぶことが重要です。
まず、一般媒介契約は、複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約です。この契約では、依頼者自身が直接買い手を見つけることも可能で、自由度が高いのが特徴です。しかし、その自由度の反面、進捗状況の報告義務がないため、依頼者が積極的に状況を確認する必要があります。これは、複数の業者と連絡を取り合う手間がかかる点でも注意が必要です。
次に、専任媒介契約は1社のみに依頼する契約です。この契約では、依頼者自身が買い手を見つけた場合でも、その相手と直接取引が可能です。また、契約締結後7日以内の物件登録や、14日ごとの報告義務があり、依頼者は取引の進捗を定期的に確認すできます。これにより、専任媒介契約はより管理がしやすく、売却活動が効率的に進む可能性が高まります。
専属専任媒介契約は、最も拘束力の強い契約です。この契約では、依頼者は1社の不動産会社としか契約を結べず、たとえ依頼者が直接買い手を見つけた場合でも、不動産会社を通じて取引を行わなければなりません。そのため、報告義務も厳しく、1週間に1度以上の頻度で販売状況を報告する義務があります。これにより、依頼者はより密接なサポートを受けられますが、その分、自由度は制限されます。
さらに、これらの媒介契約に加えて「買取」という選択肢もあります。買取とは、不動産会社が直接物件を買い取る方法です。通常の売却よりもスピーディに現金化できる点がメリットで、売却までの待ち時間が取れない場合や、周囲に知られずに素早く売却したい場合に適しています。