不動産売却時は抵当権抹消手続きをすべき!手続きの流れや費用を解説
不動産売却時に必要となる抵当権抹消手続きについて、まず抵当権とは金融機関が貸したお金の担保として不動産に設定する権利です。ローン完済後も、登記簿謄本上の抵当権は自動的に消えないため、抹消手続きを行う必要があります。
抹消手続きは、不動産を売却する際や、住宅ローンの借り換え、相続などのタイミングで行われます。また、抹消手続きを行わないと、不動産売却や新たな融資に支障が出る可能性があるため注意が必要です。
目次
不動産売却で考慮すべき抵当権抹消手続きとは
浜松市で不動産売却を検討している方の中には、まだ住宅ローンが残っている方も多いのではないでしょうか。そうしたときに知っておきたいのが、抵当権抹消手続きです。まずは、抵当権抹消とはどういった手続きなのか、どのようなタイミングで求められるのかを見てみましょう。
◇そもそも抵当権抹消とは
抵当権とは、金融機関などのお金を貸した側(債権者)が、不動産を担保にする権利のことです。もしもお金を借りた側(債務者)が返済できなくなった場合、貸した側は抵当権を設定した不動産を競売にかけ、優先的に払い戻しを受けられます。
抵当権はお金の貸し借りに伴う権利であり、完済後は自動的に消失します。しかし、登記簿謄本の抵当権表記は、手続きをしなければ消えません。この「登記簿謄本の抵当権表記を消す手続き」が、今回の主題となる抵当権抹消手続きです。
◇抵当権抹消を実施するタイミング
登記簿謄本に抵当権表記があると、実際に抵当権があるかどうかにかかわらず、第三者からは抵当権があると受け取られます。不動産の売却、新たな融資申し込みの不利になる可能性もありますので、完済後は必要に応じて抵当権抹消手続きをするのがいいでしょう。
具体的なタイミングとしては、以下のようなものが挙げられます。
・不動産を売却したとき
抵当権が残ったままの不動産は、いつ担保として競売にかけられるか分かりません。そのままでは買い手にとってのリスクが大きいため、ローンを完済し、抵当権抹消手続きをしてからの引き渡しが求められます。
住宅ローン完済前に売却する場合は、買い手からの代金を受け取った後、売り手がそれをもってローン完済、抵当権抹消手続きを行い、対象の不動産を引き渡します。
・不動産を相続したとき
ローン完済後の不動産を相続したにもかかわらず、登記簿謄本に抵当権表記が残っている場合は、相続人が抵当権抹消手続きを行えます。故人の死亡後に団体信用生命保険によってローンが完済されたときも、同じく相続人が抵当権抹消手続きを行えます。
・住宅ローンを借り換えるとき
住宅ローンを借り換えるときは、前の金融機関の抵当権抹消手続きをし、次の金融機関の抵当権設定登記をする必要があります。既存の借入先の抵当権を抹消する登記と、新たな借入先の抵当権を設定する登記が必要です。
・対象不動産を担保に新たな融資を受けるとき
抵当権は登記簿謄本に先に記載された方が優先され、後に記載された方は余った分でしか払い戻しを受けられません。そのため、既に抵当権表記がある不動産は、担保としての価値が低く見積もられ、融資額が減らされたり、融資自体が断られたりします。
スムーズに融資を受けるためには、あらかじめ抵当権抹消手続きをしておく必要があります。
抵当権抹消手続きを実施しないとどうなる?
ローン完済後であれば、登記簿謄本に抵当権表記があっても、実際に不動産を取られることはありません。しかし、だからといって放置しておくと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
◇不動産売却ができないケースが多い
抵当権が残る不動産はいつ競売にかけられるか分からず、買い手にとって大きなリスクとなります。抵当権抹消手続きをしていない不動産は、抵当権が残ったままに見えるため、なかなか買い手がつきません。
◇時間がたつほど書類の準備が煩雑になる恐れがある
抵当権抹消手続きには、ローン完済時に金融機関から発行される書類が必要です。この書類は、金融機関に代表変更や企業再編などの変化があった場合、再発行してもらわねばなりません。また、金融機関の廃業などで再発行が難しいときは、裁判所で許可をもらう必要があります。
◇自身の住所の証明が難しくなる恐れがある
抵当権抹消手続き時には、登記簿謄本に記載された住所と現住所が、一致している必要があります。一致していない場合は、まず登記簿謄本を現住所に書き換えねばなりません。登記簿謄本の住所の書き換えには、記載された住所から現住所までの公的書類が必要です。
しかし、引っ越してから年数が経つと、その取得が難しくなる恐れがあります。
抵当権抹消手続きの流れと必要となる書類
抵当権抹消手続きはどのような流れで行われ、どんな書類が必要となるのでしょうか。抵当権抹消手続きの基本的な流れと、必要書類をご紹介します。
◇必要書類をそろえる
抵当権抹消手続きに必要な書類は、以下のとおりです。
・抵当権設定登記済証または登記識別情報通知書
金融機関が法務局から受け取る、抵当権の権利書にあたる書類です。ローン完済後に金融機関から郵送されるのが一般的であり、有効期限はありません。
・抵当権解除証書
ローン完済を証明する書類であり、登記原因証明情報とも呼ばれます。日付や不動産情報の漏れがないかを確認し、あれば金融機関に早めに確認しておきましょう。
・金融機関発行の委任状
金融機関が不動産の所有者に、抵当権抹消手続きを委任する書類です。抵当権設定登記済証または登記識別情報通知書と同じく、ローン完済後に金融機関から郵送されるのが一般的であり、有効期限はありません。
・代表者事項証明書
金融機関の代表者を証明する書類であり、発行後3か月以内のものが必要です。手元にない、あるいは期限切れの場合は、申請書への会社法人等番号の記載で代替できます。
なお、金融機関の名称や住所が登記簿謄本と異なる場合は、上記に加えて履歴事項証明書や閉鎖事項証明書、閉鎖謄本などが必要になります。
◇法務局で登記申請書を入手し必要事項をする
抵当権抹消手続きのための登記申請書はオンラインで入手することが可能です。不動産所有者の氏名・住所、金融機関の住所・社名・法人番号・代表者、不動産の情報などを記載します。
◇法務局に提出し手続き完了後完了通知書を取得する
記載した登記申請書を、郵送または手渡しで管轄の法務局に提出します。不備がなければ、1〜10日程度で手続きが完了し、完了通知書が取得できるようになります。
抵当権抹消手続きの費用は?司法書士は必要?
抵当権抹消手続きには、登録免許税の他、司法書士への報酬が必要になる場合があります。司法書士に依頼すべきケースも含めて、抵当権抹消手続きにかかる費用を確認してみましょう。
◇登録免許税が発生
抵当権抹消手続きには、不動産ごとに1,000円の登録免許税がかかります。不動産ごとに1,000円ですので、土地と建物がひとつずつで2000円が基本と考えておきましょう。登録免許税は現金でなく、法務局に提出する登記申請書に収入印紙を貼って納めます。
◇司法書士に依頼した場合は報酬の支払いが発生する
抵当権抹消手続きはそれほど難しくなく、不動産の所有者本人でも問題なく行えます。しかし、対応が困難な一部のケースでは、司法書士への依頼を要することもあります。司法書士に依頼した場合は、1件1万円前後の報酬を支払わねばなりません。
◇司法書士に依頼した方がよいケースとは
司法書士への依頼を要するケースとしては、以下のようなものが考えられます。
・必要書類が揃わない
紛失などで必要書類が揃わない場合は、金融機関への再発行手続きが求められます。特に登記済証または登記識別情報通知書がないときは、抵当権抹消と並行して、事前通知という別の手続きをしなければなりません。手続きが複雑になるため、司法書士への依頼が薦められます。
・昭和初期以前の抵当権が残っている
明治や大正、昭和初期に設定された抵当権は、借りていた金融機関はもちろん、完済されたかどうかすら分からない、ということが少なくありません。こうしたケースの多くでは、供託所という国の機関にローンや利息分などの金額を預け、抵当権抹消手続きを行うこととなります。
手続きや判断が難しいため、司法書士への依頼が薦められます。
不動産売却時に必要となる抵当権抹消手続きは、住宅ローンを完済した後でも登記簿謄本上に残る抵当権を正式に抹消するための重要な手続きです。
抵当権は金融機関が不動産を担保にする権利で、返済が滞った場合にその不動産を競売にかけて優先的に返済を受けられます。ローンを完済すると抵当権自体は消滅しますが、登記簿謄本上の抵当権表記は手続きを行わない限り消えないため、不動産売却や新たな融資の際に不利な状況が生じる可能性があります。
抵当権抹消手続きは、不動産を売却する時、住宅ローンの借り換え時、相続時、新たな融資を受ける際に行うべきです。特に売却時には、抵当権が残ったままでは不動産の価値が下がり、買い手にとってリスクが大きいため、手続きが不可欠です。
また、抵当権抹消を放置すると書類の準備が煩雑になり、さらに時間が経つと登記簿上の住所と現住所の不一致が問題となる可能性もあります。
抵当権抹消手続きに必要な書類には、抵当権設定登記済証、抵当権解除証書、金融機関発行の委任状、代表者事項証明書が含まれます。これらの書類を揃えた上で、法務局に登記申請書を提出し、1〜10日程度で手続きが完了します。手続きには、不動産ごとに1,000円の登録免許税がかかります。
また、状況によっては司法書士に依頼する必要があり、その場合の報酬は1万円程度です。司法書士への依頼が推奨されるケースとしては、必要書類の紛失や古い抵当権が残っている場合などが挙げられます。
特に昭和初期以前の抵当権は、借入先の金融機関の情報が不明であることが多いため、供託所に資金を預けるなどの複雑な手続きが必要です。このような場合、手続きをスムーズに進めるために専門家の助けを借りることが推奨されます。