空き家特例とは?特例の概要と手続きの流れ
家を相続した際に、空き家をそのまま放置しておくと、固定資産税の増加や管理費用の負担がかかるだけでなく、建物が老朽化していくことで近隣住民に迷惑をかけるリスクも高まります。また、適切な管理が行われていない空き家は、景観を損ない、防犯上の問題や不法侵入、不法投棄の温床となりかねません。
そのため、相続した空き家の扱いについては、早めに対策を講じることが重要です。空き家の売却や管理に際して、税金面での負担を軽減できる「空き家特例」制度を活用することで、経済的なメリットを得ながら円滑に資産の整理を進められます。
目次
家を相続したら知っておきたい空き家特例とは
家を相続した際に、空き家を放置しておくと固定資産税の増加や管理費の負担がかかるだけでなく、空き家が老朽化すると近隣への影響が心配されます。さまざまな問題を防ぐために、浜松市でも空き家の売却を考える人が増えています。
◇そもそも空家等対策の推進に関する特別措置法とは
「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、増加する空き家問題に対応するため、2015年に施行されました。この法律の目的は、空き家を適切に管理し、安全で快適な住環境を保つことです。放置された空き家は景観を損ねるだけでなく、防犯や防災の面でも問題が生じるため、法整備が必要となりました。
「特定空家」とは、著しく老朽化し、倒壊の危険があったり、防災や衛生面で危険とされたりする空き家のことを指します。自治体が特定空家に指定すると、所有者に改善を求める措置が講じられます。
◇空き家特例の概要
空き家の売却にあたって知っておくべき制度の一つが、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」です。空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除は、相続した空き家を売却する際に適用され、売却益から3,000万円までの金額を所得税や住民税の対象から控除できる制度です。
売却益から3,000万円を控除できることにより、相続した空き家を売却した際に大幅な税金の負担軽減が期待できます。ただし、この特例を受けるためには、いくつかの要件が定められているため、事前に確認が必要です。
相続不動産を空き家にしておくリスク
相続した不動産をそのまま放置し、空き家として放置しておくとさまざまなリスクが生じます。空き家は適切な管理が行われなければ、地域の景観や安全に悪影響を与える可能性があり、法律的な対応を求められることも少なくありません。
◇特定空き家に指定される
「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、自治体は著しく管理が行き届いていない空き家を「特定空家」として指定できます。特定空き家に指定されると、所有者は自治体から改善命令を受けることがあり、命令に従わない場合には最終的に行政代執行や罰則が適用されることがあります。
具体的には、罰則として、通常であれば軽減される固定資産税の優遇が解除され、税負担が大幅に増加します。また、最悪の場合、建物が撤去されることもあり、その費用は所有者が負担しなければならない可能性があるため、注意が必要です。
特定空き家に指定されないためにも、適切な管理や売却などの早急な対応が求められます。
◇害虫が発生する
空き家は人が住んでいないため、湿気や汚れがたまりやすくなり、害虫が発生するリスクが高まります。特に、ゴキブリやシロアリ、ネズミなどの害虫は、一度発生すると近隣の住宅にも被害を及ぼすことがあり、周辺住民とのトラブルにもつながりかねません。
害虫の発生は建物自体の劣化を早める原因にもなるため、空き家にしておく期間が長くなるほど、家全体が痛み、修繕費用も膨らむリスクが高まります。
◇不法侵入や不法投棄のリスクが高まる
空き家は無人であるため、不法侵入や不法投棄のリスクが高くなります。特に、放置された空き家は犯罪の温床となる可能性があり、放火や窃盗などの犯罪行為が発生しやすくなる点も問題です。
また、不法投棄されたゴミが原因で環境汚染が進んだり、さらなる害虫の発生を招いたりすることもあります。
◇資産価値が下がる
空き家を長期間放置しておくと、建物が劣化するだけでなく、その不動産全体の資産価値が大幅に下がります。特に築年数が古くなると売却価格も下落しやすく、リフォームや修繕費用をかけても思うように利益を得ることは難しくなるでしょう。
資産価値が下がれば、将来的に相続や売却時に得られる金額も減少し、結果的に家族や遺産相続人にとって不利な状況に陥ります。
不動産売却で経済的負担を軽減
不動産を相続した場合、維持費や税金の負担が発生し、そのまま所有し続けることで経済的な負担が大きくなることがあります。不動産を売却することで、これらの経済的負担を軽減できるメリットがあります。
◇遺産の分配がしやすくなる
不動産を相続した際、現金のように簡単に分割できないという問題があります。特に複数の相続人がいる場合、不動産を誰が取得するのか、またどのように分配するのかは大きな課題です。不動産を売却して現金化すれば、遺産の分配が格段にしやすくなります。
また、現金での分配は公平かつ迅速に行うことができ、相続人間でのトラブルや争いを防げます。また、売却によって得られた資金を用いて、相続税や他の経費を支払うことも容易になるため、売却による現金化は、相続手続きにおいて経済的負担を軽減する大きなメリットです。
◇維持費がかからなくなる
不動産を所有し続ける場合、固定資産税や維持管理費が発生するため、長期的な経済的負担につながります。例えば、相続した不動産が使われていない空き家の場合、活用しない限り、固定資産税や修繕費、管理費用などのコストがかかり続けます。
特に、建物の老朽化が進めば、修繕やメンテナンスにかかる費用は増加しますし、空き家であれば火災や犯罪のリスクも高まり、その管理費用やリスク対策も必要です。
しかし、不動産を売却することで、これらの固定費を削減でき、将来的な出費の心配の解消ができます。不動産売却は、維持管理にかかる費用を一切なくし、家計の負担を大幅に軽減する手段として非常に有効です。
空き家特例を適用するための手続きの流れ
空き家特例は、相続した空き家を売却する際に、譲渡所得の3,000万円までを控除できる制度です。空き家特例を利用するためには、要件を満たし、必要書類を整えて申請手続きを行うことが必要です。
◇適用要件
空き家特例を利用するためには、いくつかの厳格な条件を満たさなくてはなりません。具体的な必要要件には、以下のようなものがあります。
空き家特例の対象となるのは「被相続人居住用家屋」と「被相続人居住用家屋の敷地等」に限定されます。これは、相続した家屋が、被相続人が亡くなる直前まで居住していたものであることが前提です。
また、家屋は事業用や貸家ではなく、被相続人が実際に居住していた住宅であることが条件となります。さらに、家屋は旧耐震基準で建築されたものであることが求められますが、耐震リフォームを実施して現行基準に適合させた場合も特例の適用が可能です。
譲渡は、相続が開始してから3年以内に行われることが条件であり、家屋を取り壊すか、あるいはそのままの状態で売却する必要があります。また、家屋を取り壊した後に土地のみを売却する場合でも、この特例は適用されます。
空き家特例を活用するためには、すべての必要要件を満たすことが必要なため、事前に確認が必要です。
◇必要書類
まず、被相続人が亡くなった際に相続が発生したことを証明する戸籍謄本や相続関係説明図が必要です。さらに、家屋が相続直前に被相続人の居住用であったことを証明するために、住民票や除票を用意しなければなりません。
また、家屋の登記事項証明書も必要となり、この書類を通じて家屋の所有権が相続によって移転されたことを確認します。譲渡が行われた際には、売買契約書の写しや、契約に関連する不動産の登記事項証明書が必要です。
さらに、耐震リフォームを行った場合は、耐震基準適合証明書も提出しなければなりません。
◇手続きの流れ
手続きは、いくつかの段階に分かれて進められます。まず、最初に行うのは、市区町村に対して「被相続人居住用家屋等確認書」の申請を行います。この確認書は、相続した家屋が空き家特例の対象となることを証明するために必要となる書類です。
次に、実際に不動産を売却する段階に進みます。売却が完了した際には、譲渡契約書や売買契約書の写しを準備することで、確定申告に備えます。
最後に、売却した翌年の確定申告で、譲渡所得に対する3,000万円の特別控除を申請します。税務署に必要な書類をすべて提出し、正式に特例の適用を受けるための手続きを行います。
申請が遅れると、特例が適用されない可能性があるため、早めに準備を進めることが重要です。
家を相続した不動産が遠方にあると、空き家をそのまま放置しがちです。しかし、不動産を放置し続けると、固定資産税の増加や管理費用の負担がかかるだけでなく、建物の老朽化が進み、近隣住民への悪影響や、景観を損ねる問題が発生する可能性があります。
また、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、相続不動産を放置することが難しくなりました。この法律に基づき、自治体が「特定空家」として指定した場合、改善命令が出され、命令に従わなければ固定資産税が増加するリスクがあるためです。
空き家を放置すると、害虫の発生や不法侵入といったリスクが高まるほか、建物の劣化が進み、資産価値の低下も招きます。これにより、最終的に売却時の価格が下がり、相続人にとって不利な状況が生じることもあります。したがって、相続した空き家は、できるだけ早く売却や管理の手続きを行うことが大切です。
相続した空き家の売却には、税金面での優遇を受けることができる「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」制度があります。この制度は、空き家の売却益から3,000万円を控除することで、大幅な税負担軽減を図れる仕組みですが、適用にはいくつかの条件があります。例えば、相続した家屋が被相続人の居住用であったことや、耐震基準を満たすことが求められます。
空き家特例を活用して、相続した不動産の売却を進めるためには、まず市区町村に「被相続人居住用家屋等確認書」の申請を行い、適切な書類を揃えて確定申告を行う必要があります。条件を満たし、早めに準備を進めることで、税負担を軽減しながら円滑に資産を整理することが可能です。